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故郷の酒

「ジョー、何見てるんじゃい?」

店内用のカートに食糧を満載した竜が、ジョーの視線の先を、顎に手をあてて一点を見つめるジョーの視線の先を見た。

そこには、葡萄酒の瓶が整然と並んでいる。竜の顔が険しくなる。

「酒なんか持ち込んだら博士から大目玉喰らうぞい

俺の国の法律ではもう飲んでもいいんだぜ、とだいぶ前にジョーが得意気に言っていたことを竜は覚えていた。しかし、今彼らが暮らしているユートランド界隈では、二十歳以下の飲酒は厳禁なのだ。

「飲もうって訳じゃねえよ、ちょいと気になってな」

これを見てくれよ、とジョーが指差した先には、イタリア語とおぼしき言葉で書かれたラベルがあるが、イタリア語を知らない竜には書かれている内容がわからない。

「この産地は、俺の故郷の辺りなのさ」

ジョーの言葉に、竜は数ヵ月前に訪れたジョーの故郷の島の様子を思い出した。ゴッドフェニックスから眺めた島は蒲萄やオリーブの畑が広がる、典型的な地中海の島だった

「表示が間違ってやがる」

葡萄酒の棚の価格表示には、原産地が国旗で示されている。表示されている国旗はイタリアのものではなかった。

「すみません、ちょっといいですか」

ジョーは、近くを通りかかった中年の女性店員に声をかけた。ジョーも竜も外見は未成年に見えないため、子供が酒を物色していると責められるようなことはない。

「この表示なんですけど…」

ジョーが他所行きの口調で店員に説明するのをよそに、竜は葡萄酒コーナーに隣接する、世界各地のローカルな酒のコーナーを眺めていた。その中に並ぶ一本の日本酒のラベルに竜は惹き付けられた。ラベルに書かれているのは竜の故郷の山の名前だった。

竜は瓶を手に取った。ラベルには、その酒が竜の家に程近い酒蔵が作ったものであることが書かれていた。

「どうした、竜」

今度はジョーが竜の手元を覗きこんだ。

「おらの故郷の酒じゃ

嬉しそうな顔で、竜は振り向いた。

「それじゃあ親父さんの晩酌の酒かもしれねえな。親父さんは海の男だから、つまみは自分で捕った魚だな、最高じゃねえか」

ジョーの軽口に、やっと調子が戻ってきたのかと竜は安堵した。もともと、ジョークが好きで、ラテン系らしい陽気な男だったジョーが、故郷の島での一件以後、口数が減り、時折人を拒むような雰囲気を纏うようになったのを心配せずにいられるほど、竜は冷たい人間ではなかった。

 

南部の別荘に向かう車中で、ジョーは助手席の竜に話しかけた。

「なあ、竜」

「なんじゃい」

「ギャラクターを倒して、そのとき俺たちが二十歳になっていたら、互いの故郷の酒で乾杯しようぜ」

二十歳までにそんなに時間はない。しかし、戦いは佳境に入っている。決着がつくまでに長い時間はかからない、そんな予感がいつとはなしに忍者隊の五人を支配していた。

「男と男の約束、ちゅうやっちゃな」

「ああ、つまみもたっぷり用意してな」

楽しい話に、二人の口調も弾んでいく。

「任せとけ。お前の方こそ、約束守るんじゃぞ。破ったら一発ぶん殴らせてもらうぞい、いいな

    

………………………………………………

おしまい。

少し前のスーパーでの出来事をヒントに書いてみました。

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コメント

No title

主婦がたくさんいそうなスーパーでお買い物している2人・・。目立つだろうなあ。博士のお使いかな?

なんとなく水と油のような2人なのになんだかんだいいコンビですよね。
本当にお酒飲み交せたらと良かったのになあ・・(しみじみ)

Re: No title

kisaraさま、コメントありがとうございます。
シチリアネタなのでメインがジョーなのは当たり前として、相棒に竜が自然に思い浮かんだのは自分でも不思議な感じがします。
他のメンバーでも話は成立するんですけどね。

飲み交わせなかったのは悲しいですが、現実の話として、ワインと日本酒をチャンポン飲みって良くないですよ~(経験者w)

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